第16回 エレクトロニクス実装学術講演大会印象記
 

 

 

会期:
2002年3月18日
             ~20日

会場:神奈川大学

 
18日 A会場
「配線板製造技術」
   立ち見が出るほどの満席であった。他関連学会で,すでに発表している講演も一部見られたが,非常に現場に近い技術の発表が目立った。古くから行われている銅電析に対する添加剤効果に対しての講演は,もう少し新しい評価法に基づく解析が必要と感じた。また,光触媒技術をエレクトロニクス実装分野に適用した発表は珍しく,今後の進展に期待したい。(吉原佐知雄・宇都宮大)
   "微細配線パッケージおよび基板技術の展開"と題した依頼講演は,若林信一氏(新光電気)により初日の2時から2時半まで行われ,会場は講演開始前から満席となり立ち席も出る盛況振りであった。講演の内容は,微細配線を必要とする先端パッケージや基板用の分野におけるビア形成,銅めっきによるビアの穴埋め技術,各種の層間接続と積層技術,高耐熱性,低誘電率,低誘電損失などの特性を備えた材料開発,受動部品の埋め込み技術など多岐にわたる技術分野に関するものであった。(本間英夫・関東学院大)
18日 B会場
「電磁特性技術」
   電磁特性,午前セッションの最初の2件は,携帯電話などで遭遇する不要電磁波による性能劣化に関する依頼講演で,筐体内の電波環境改善や携帯電話の利得改善のための電波吸収体活用例と,基板とアンテナとの電磁干渉を避けるための設計例が紹介された。GHz帯高周波技術の用途拡大に従い,電磁干渉を避けるための材料や解析手法を機器設計へ生かすことが期待され,関心が高かった。(須藤俊夫・東芝)。
03, 04の2件はプリントスパイラルアンテナについての研究で,パラメータを変えながら特性の変化を丹念に調べ,小型化,アレー化という実用化に向けての検討が行われた。また,05, 06はミアンダ,ビア配線の放射特性を検討したものであり,どのような配線要素が放射の原因となるかという結果が報告され非常に有意義であった。(高橋丈博・拓大)
   (1)コンデンサ定格表示への自己共振周波数の追加の提案,(2)ビアを含む伝送線路の伝送特性及びビアのモデル化,(3)コプレーナ線路分岐部の伝送損失を考慮した設計の考察,(4)正弦波を用いたTDRによる特性インピーダンスの周波数依存性測定法の考案,(5)磁界プローブによるコプレーナ型配線を流れる電流値の同定について講演が行われた。(2)は高速信号伝送においてその高周波特性が明らかにされる必要のあるビアについて種々の考察がなされており,今後の展開を含めて興味深い。(櫻井秋久・日本IBM)
18日 C会場
「環境調和型実装技術」
   講演全体の印象として,学術的考察が不十分であり,ある実験を行ない,その結果について説明するのみに終始している。学会のレベル向上のためにも,十分な考察を加える必要があると感じた。また,質疑も同様で,低調であった。(苅谷義治・芝浦工大) 
「電子部品・実装技術」
   依頼講演2件中1件は,18GHz近辺までCu箔線路近似の伝送性能を持つAgエポキシペーストの報告で画期的内容。ペースト構造に質問が集中したが,解析中で発表は次回を約束。もう1件はマイクロ接続研究会のはんだ代替導電性接着剤アンケート調査報告で,武田主査の都合が悪く同研究会の本多が,ユーザーの期待は大きいが課題も多いとの結果を報告。導電性樹脂の今後が期待されるセッションとなったが,今後の発表論文増にも期待したい。 (本多 進・昭栄ラボラトリー)
19日 A会場
「信頼性解析技術」
   19日午前は、BGAはんだ接合部の衝撃強度試験装置とこれを用いた評価結果の報告が2件あった。高剛性アームを用いたマイクロショット試験では、Pbフリーはんだ接合部の金属間化合物層厚さの異なるサンプルを用いて試験を行い、衝撃はく離強度との相関が得られた。また、プローブを基板に落下衝突させる衝撃曲げ試験装置では、基板ひずみとBGAはんだ接合部の断線発生までの回数と相関が得られた。これらの研究はモバイル機器実装信頼性の事前評価に有効と考えられる。またはんだ接合部にサーモカップルを接続し、はんだ内部に生じるひずみを直接計測する手法の紹介があった。衝撃負荷をはんだバンプに与えたときその大きさと起電力波形とで相関が得られている。パッケージ組み込み式にできれば信頼性の高い試験が実施できると思われる。次にSn-Zn系はんだ信頼性の発表が2件あった。最初の発表はバンプ形成するCuパッドの表面処理とSn-Znはんだの組み合わせにおける信頼性の評価であり、Ni/Au表面処理の信頼性が高いことが報告された。次の発表はSn-9Znはんだを用いたフローはんだ付けでのぬれ性、ランドはく離、lifi-offnの調査結果であり、プリフラックス基板Ni/Pdめっき品はフローアップしないがSn-9Znレベラ処理基板を使用することでフローアップする、Sn-9ZnフローではLift-offに対して効果があることなどが報告された。(伊東伸孝・富士通)
「材料技術」
   今回,業界における技術の進歩を感じた。以前のRCCはレーザー穴あけ前に事前に銅箔に開口を形成していたが,今回紹介のあった方法でこの穴形成工程を省けることによってトータルのコストメリットが考えられる。また,ガラスクロスへのシランカップリングに加え追加表面処理によって特性が向上することも新しい発想と思われる。また,フォトレジストにおいても従来の回路形成用途が進歩し,そこでの要求も厳しいものになってきている。凹凸なのど表面状態によりよく追従される,ニッケル・金無電解メッキなどの処理薬品・条件に耐える。今後もこれらの技術が発展することを期待する。(江坂 明・デュポン)
   東京応化・前田氏の厚膜DFRの講演は,銅ポストやバンプ形成に有用。デュポン・三田氏,小西氏よりLDI用DFR,低スラッジ化技術の講演。LDI用は高感度・高解像度が特長。低スラッジ化では新規な開始剤開発により飛躍的にスラッジ発生を抑制した。ニチゴーモートン・高宮氏からは7μ解像する25μ厚DFRの発表。密着性向上技術についてプロセス面(真空ラミネーター,現像条件)の提案がなされた。(五十嵐勉・旭化成)
19日 B会場
「回路・実装設計技術」
   回路・実装設計最初のセッションでは,モバイルPCにおけるCPU実装設計,バッファ挿入機能を持った配線手法,Sパラメータを用いた伝送波形解析,信号伝送におけるクロストークノイズ,伝送線路の伝播モードにおけるクロストーク測定に関して発表があった.会場は満席で,本分野に対する関心の高さがうかがわれた。全員がパソコンを用いた講演であったが,講演者の入れ替えに時間を要し,質疑時間が減ったことが残念であった。(埼玉大・金杉昭徳)
   プリント配線板における高速信号伝送ノイズ・放射ノイズに関する4件の発表があった。ユニークな同軸構造を持つ配線板の電気特性,配線板のRLC回路網モデルを高速にノイズ解析計算する回路縮小技法,デカップリングコンデンサ最適配置をポインティングベクトルに着目して決定する手法,電磁放射を少なくする構造を電磁界解析で検討した発表があった。いずれの講演も実設計に利用できる有益なもので,講演会場も満席と盛況であった。(三菱電機・吹野正弘)
19日 C会場
「半導体パッケージ技術」
   材料技術からパッケージ評価まで,多岐に渡る内容の発表が行われた。発表は,封止 樹脂内フィラ粒度分布とワイヤー流れの相関考察,低コスト化を目的にしたインター ポーザレスBGA開発,SIP内部の配線長の相違を考慮した電気特性評価,MCP内部のチップ搭載の相違を考慮した熱抵抗評価,特殊硫酸銅めっき液でビアを直接平坦化する 5件について活発な議論が行われた。今後とも,半導体パッケージ技術を支えるさら なる技術開発に期待する。(山田浩・東芝)
20日 A会場
「材料技術」
   午前最初の発表はリペアブル封止材開発が2件とメンブレンSW関連が2件であった。FC実装のバンプ接続信頼性向上で樹脂封止は常套であるが,リペア不能ではLCI不良の際,実装基板ごと死損となる。NEC・久保氏からは硬化剤を中心とした検討の末,特殊設備不要のリペア性と,信頼性を両立したエポキシ系封止樹脂開発報告がされた。続いてサンスター技研・後藤氏からは,低温硬化・可逆反応型ウレタン系封止樹脂でエポキシ系と同等の信頼性が確認されたと報告された。フジクラ・小野氏からはシール用粘着剤の軟化点を最適化して,シール界面の密着性と耐水性・耐熱性をバランスし,水への連続浸漬に耐える防水メンブレンSWの製品化が報告され。同じくフジクラ・中嶋氏からは,感圧ペーストの配合を検討して,面内ばらつきを抑制し,温度特性を向上した感圧センサー開発が報告された。(海老塚守之・ソニー)
   当担当セッションでは,4件のプリント配線板に関する講演が行われた。最初の3件は,最近の高密度化,薄型化に対応するために,いかに低熱膨張化,高弾性率化を実現するかの発表であった。即ち,利昌工業の西口氏からフィラ-を充填した積層板,旭電化工業の福田氏からはウィスカとフィラ-を配合したビルドアップ基板用樹脂,松下電工の平田氏からは新開発樹脂と粒子を使用した高実装信頼性積層板の発表であった。また,東芝ケミカルの小川氏からハロゲンフリ-の高Tgビルドアップ配線版材料の発表があり,環境調和型材料として興味ある発表が行われた。(松井孝二・日本電気)
20日 B会場
「検査技術」
   ICリードのZ方向位置の均一性(コプラナリティ)の3次元測定結果に関する発表があった(アンリツ)。本装置は部品挿入機に組み入れて挿入前にICリードの高さの均一性を測ることを狙っている。3次元はんだ印刷検査技術(CKD)は,縞パターンを対象物に照射して,縞の位置の変化から3次元位置を測定するもので,3次元形状を良く検出している。これに関しては同種の装置が市販されているが,種々の技術が開発されることは望ましいことである。(原 靖彦・日大)



×閉じる