JIEP関西ワークショップ2002報告

JIEP Kansai Workshop 2002 Report

関西ワークショップ実行委員会委員長:山中 公博(日本アイ・ビー・エム)

 

   今回で第7回目になる関西ワークショップを、2002年11月29日金曜日、京都にて開催致しました。 例年にも増して揺れ動く経済状況の中にも拘らず110名以上の多くの方の参加が得られました。 これは、本ワークショップの趣旨である「参加者全員の双方向性ディスカッションを通じた現状の問題解決、意見交換、将来技術への展望を獲得する」ことが、当学会及び業界に幅広く浸透し、その有用性が認識されてきた結果であろうと推察しております。 実行委員会として、この盛会を今後の当学会及び業界の発展のさきがけとして頼もしく感じるとともに、参加して頂きました方へお礼を申し上げます。
   今回のメインテーマは「実装革命、じわり進行中」とさせて頂きました。物事の本質を見失わない技術者の貢献のもと、実装技術も従来にない技術革命を、じわりと進めている現状を反映すると考えました。 ワークショップの内容も、このメインテーマに沿った講演、発表を企画致しました。
   今回は、例年より10分早い9時50分よりの開会でした。 まず、アトムニクス研究所の畑田氏より開催の挨拶を頂ました後、午前中は、現在話題になっている「ナノテクノロジー」と「知的財産」について、それぞれ専門家の方より興味深くかつ示唆に富む、また、実用性のあるご講演を頂きました。 昼食をはさんで20名のポスター発表の方々よりアブストラクトを1件あたり2~3分で発表して頂いた後に、ポスターセッションを開始いたしました。 ポスター5件を1グループとし、全体で4グループを構成し、それぞれに40分間のクローズタイムを設け、クローズタイムにはポスター発表の方々も他のポスター発表者と議論ができるよう配慮した構成と致しました。 また、閉会にあたりエレクトロニクス実装学会副会長のシャープ 貫井氏より、今回のワークショップの総括を頂き、予定通り17時に閉会することができました。

   1件目の講演は、豊橋技術科学大学助教授 滝川氏より「長尺カーボンナノ材料の合成と応用」と題して、約1時間、ご講演を頂きました。 ナノテクノロジーの基本から応用まで解説していただき、非常にわかりやすく、得るところが非常に大きい講演であったと思います。 参加者は学生時代へ戻った気分で、講演の中から試験に出るポイントを探すような感じで聴講できたかと思います。 1.ナノチューブの製造方法のひとつにアーク放電方法があり、ある意味どこにでも存在しうる物質であること、2.カーボンナノ物質を合成した後のハンドリング方法などまだ泥臭いところで問題があること、3.また、走査型プローブ顕微鏡の探針のようにすでに市販されている例もあることなど、今後の課題を含めたご講演をいただきました。 聴講者全員、ナノ材料が身近に感じられるようになったと思います。 現段階では、ナノテクノロジーを現在活躍している半導体実装技術に直接結びつけられる分野は数少ないかもしれませんが、この技術の可能性を考えると、将来この技術が必要になる分野が現れると感じています。 今回参加された方々の中には、すでにその方向に向いて進まれようとされる方がおられるのではと思います。
   2件目の講演は、NECエレクトロニクスの萩本氏より「技術開発と知的財産」と題して約1時間、ご講演を頂きました。 日本経済再浮上の切り札のひとつといわれ、政府も動き出している非常にホットな分野のご講演でした。 1.知的財産の内容がハードからソフトへそしてその融合体へ変化していることなどの「特許と世の中の動向」について、2.日本では、特許の量を重視はしているが権利の活用は少ない、これに対し、欧米では特許の質を重視し、権利を活用しライセンス料による収益を戦略的に経営に取り入れていることなど、日米での特許に対する姿勢の比較、3.基本特許が必要とされている現状に対し、出されている特許は改善あるいは応用特許がまだ多く、ギャップのあること、4.ビジネスサイクルの各フェイズで必要な特許とその利用方法、また、資産をお金勘定する必要性がもう出てきていることなど非常にわかりやすく解説していただき、得るところが大きく有益なご講演であったと感じています。 参加者の方々にとって、中国を初めとする海外進出の際に必ず必要となるリーガルマインド、技術だけではどうにもならない問題とその現状について、理解させて頂けた思いが致します。

    ポスターセッションは、現在非常に話題性の高いテーマ20件のご発表を頂きました。 3次元実装技術、MEMS技術、エンベッディドパッシブ基板、鉛フリー化技術、光関連技術、ナノ材料、プラズマ技術、フリップチップ技術などいずれも次世代技術の主役であり、「じわり」と「技術革命」が進行している分野です。 各ポスター設置場所には、ポスターだけでなく、ビデオあるいは実際の試作品を陳列していただき、参加者が実際にそれを手にとって、ポスターの写真等と比較して活発に議論することができました。 また、名刺交換の場面も多く見受けられ、後日、更なる議論を約束されているケースもあったようです。 多岐にわたるテーマではありましたが、「関西ワークショップに参加すれば、実装技術について現在の当学会、及び、業界の動向が一目で把握でき、かつ、深く議論でき、現実に問題になっているポイントを押さえることができ、将来への架け橋を考えることができる」と、ある参加者の方が話されていたことが印象的で、かつ、本ワークショップの目的を達しているとの感触を得ることができました。

   最後に、本ワークショップに参加されました方々、ご講演を頂きました滝川、萩本の両氏、ポスター発表を頂きました方々、企画運営にご尽力いただきました実行委員会顧問の方々、実行委員の方々、そして、学会事務局の方々に心より感謝の意を表します。
   晩秋の京都といえば「紅葉」と「関西ワークショップ」といわれるように、本ワークショップが、更に当学会及び業界へ浸透していくことを期待しています。 また、今回参加された方々に、次回ワークショップで再会できることを期待し、本報告書の結びとさせて頂きます。

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