2002ワークショップ開催報告
実行委員:山道新太郎(NEC)厳しい暑さが一段落した9月5日(木)・6日(金)に、恒例のワークショップがラフォーレ修善寺(静岡県田方郡)にて開催されました。本ワークショップは、実装材料・パッケージ・実装シミュレーション・光部品・機器実装など、実装分野全般にわたる発表をポスター形式で行い、1泊2日の宿泊を通して参加者全員が技術的かつ人的な交流を深めることができるものとして、毎年9月の第1木・金曜日に開催されています。今回は12回目となりますが、長引く景気低迷の影響とIMAPS-2002(米国)との日程重複のためか、参加者が例年より15%ほど減少し総勢97名でした。しかしながら、初参加者の割合が例年より多く、ポスターセッションの討論や夜の懇親会時はとても活気溢れるものとなりました。
本ワークショップはエレクトロニクス実装学会の重要行事の一つであり、学会や研究会とは違って、「実装技術に関わる参加者すべてが、人間的なふれあいを通して本音で議論し合い、双方向のディスカッションを通じて現状の課題を浮き彫りにするとともに、その克服に向けての斬新なアイデアやヒントを得る」ことを目的としています。そのために、遠隔地ではありますが環境抜群のラフォーレ修善寺を開催地として選び、宿泊を基本とし、ノースーツ/ノーネクタイ/撮影録音禁止をルールに定めています。
さて、今回のメインテーマは「21世紀を切り拓く先端実装技術」、サブテーマは「製造業復活のカギを握るハイパフォーマンス実装」であり、欧米やアジアに押され気味の日本のエレクトロニクス産業の復活に向けて、カギとなる高付加価値実装技術の発表が31件ありました。また特別企画として、志村幸雄さん((株)工業調査会/JIEP参与)と傳田精一さん(長野県工科短期大学校/JIEP参与)を講師にお迎えし、メインテーマに即したグローバルな視点からの特別講演を行っていただきました。
初日の朝は10時から登録開始でした。多くの方が専用バスで到着され、初参加で少々緊張されている方々の中に、リピーターですでに雰囲気になじんでいる方が混ざっていて、独特な雰囲気の中でオリエンテーションが始まりました。今回のワークショップの主査である田遠さん(住友電工)が急きょ欠席となったため、小林さん(JIEP理事/セイコーエプソン)から開会の挨拶と今回のワークショップのテーマ説明、およびスケジュールやルールの確認がありました。続いて第1セッションへと移りました。最初のアブストラクトトークでは、発表者が3分間の時間の中で、内容の要旨や聞いて欲しいポイント、ディスカッションしたい点などを発表されました。総じて皆さん控えめな発表でしたが、中には技術インパクトのみを一言で簡潔に発表された方もいて、ポスター発表を乞うご期待、というものもありました。
昼食をはさんで午後1時開始のポスターセッションでは、すでに開始前から議論が始まっていて、参加者の意気込みが感じられました。この日は、接着樹脂等の実装材料4件、ウエハプロセス3件、COF/多層配線基板4件、受動素子内蔵基板1件、光実装3件、機器実装1件の発表がありました。どのポスターも人だかりができ、活発に議論を交わしたり、熱心にメモを取る様子が見受けられました。例年同様、発表者の方も他の発表を見られるようにとクローズドタイム(30分)を設けましたが、議論が白熱してなかなか開放してもらえない発表者の方もおられたようです。
午後4時からは、全員着席して志村さんによる特別講演を拝聴しました。志村さんは、過去10年間の日本の半導体産業衰退の原因として、戦略性の欠如やプロセス偏重・設計軽視、what to makeの弱体、デジタル化への乗り遅れ等を指摘されました。またIT化を阻害する法制度にも言及されました。しかし日本には「モノ作りへのこだわり」が文化として蓄積されている面があり、モノを離れて富は生まれないこと、そして「脱工業化社会」をモノ作りから離れるという意味で捉えるのは誤解であり、製造業と情報産業が融合するというとらえ方をすべきであって、得意技術をエンジンにして製品の高度化・高付加価値化を図ることで復活が可能となることを述べられました。
講演後に部屋割りが発表され、夕食の懇親会まで自由時間となりました。部屋で自己紹介をしたり、温泉で汗を流したりして、一息つかれたことと思います。夕食は立食形式であり、司会の齋藤さん(東芝)のスピーチ、志村さんの乾杯の音頭によってスタートし、最後に傳田さんのスピーチによってお開きとなりました。今回は若手技術者の参加が比較的多く、あちこちで話に花が咲いたようで、質量共に満足できる料理にも助けられて、交流の輪を広げることができたと思います。
午後8時半以降の第2セッションは、各部屋に討論資料を持ち込んでのフリーディスカッションです。実装技術の将来像や現状打破に向けた意見、お互いの会社の話からプライベートな話まで、夜更けまで大いに盛り上がった部屋もあったようです。
2日目は朝食とチェックアウトをすませ、9時40分の第3セッション・アブストラクトトークから始まりました。一夜明けてすでに参加者どおし交流が進んでいたこともあり、皆さん疲れた様子もなく、活発な議論が繰り広げられました。この日は、実装材料/接続3件、ウエハプロセス/MEMS/3次元実装3件、COF/多層配線基板2件、受動素子内蔵1件、光実装3件、機器実装2件、環境技術1件の発表がありました。基礎的な材料特性の考察から製品化を意識した信頼性の評価まで、改めて実装のカバーする技術領域の広さを実感できました。
ポスターセッション終了後の午後2時半より、傳田さんの特別講演を拝聴しました。講演の中で本ワークショップの過去からの流れが紹介され、発表された技術の約4割が実用化に至り実装技術のスタンダードになっていることが示されました。続いて、基板・接続・Pbフリーはんだ・WLP等について最新技術の紹介がありました。最後に、実装技術立国に向けて「何でもやってみよう」という精神の徹底推進が重要であることが示されました。例えばウエハ研磨のように最初は前工程から拒絶された技術でも、実装側が積極的に提案することによってデファクト技術となったような例も多いので、自信を持って新技術開発に挑戦しよう、というエールが送られ、閉会となりました。
本ワークショップ終了後のアンケートでは、普段議論する機会の少ない異分野・異業種の技術者と打ち解けて話をすることができた、情報入手が手広くできた、といった意見がありました。当日配布された参加者全員の名刺のコピー集と合わせて、このワークショップが皆さんの今後の課題解決や新しい仕事のきっかけとなれば幸いです。また、会場の狭さやラフォーレへのアクセスの不便さ等のご指摘もあり、実行委員として慎重に検討し、来年以降のワークショップに有意義に反映させてゆきたいと思います。
最後に、ご発表いただいた方々、ご参加いただいた方々、事務局の方々に感謝を申し上げ、本会の報告といたします。