2003ワークショップ開催報告

実行委員:天明 浩之(日立製作所)

 10年ぶりの冷夏も終わりに近づいた9月4日(木)・5日(金)に、第13回ワークショップがラフォーレ修善寺(静岡県田方郡)にて開催されました。本ワークショップは、材料、基板、接続、パッケージ、光実装、設計解析、MEMSなど、実装技術の全ての分野にわたる発表をポスター形式で行い、1泊2日の宿泊を通して参加者全員が技術的な議論のみならず、人的な交流を深めることを目的に、毎年9月の第1木・金曜日に開催されています。

 今回のメインテーマは「IT・ネットワーク社会を先取りする先進実装」、サブテーマは「製品力・製造力の強化を目指して」であり、アジア-特に中国-に押され気味の日本のエレクトロニクス産業復活に向けて、カギとなる高付加価値実装技術の発表が31件ありました。また特別企画として、大西哲也さん(Grand Joint Technology Ltd)と傳田精一先生(長野県工科短期大学校/JIEP参与)を講師にお迎えし、メインテーマに即したグローバルな視点からの特別講演を行っていただきました。

Photo1 今回の参加者は、昨年とほぼ同数の総勢94名で、初参加者、若手技術者の方が多く見受けられました。

 ワークショップは、『学会』/『セミナ-』・講演会とは違って「発表者、参加者が互に議論を行う双方向のディスカッション」を目的としています。そのために、議論の場は、昼のポスターセッションのみならず夜の各部屋での議論も重要な場と考えております。そのため、議論に集中できる環境に適地であるラフォーレ修善寺を開催地として選び、宿泊を基本とし、ノースーツ/ノーネクタイ/撮影禁止/録音禁止をルールに定めています。

 初日の朝は10時から登録開始でしたが、初参加の方が多かったためか余裕をみて来られた方が多く、早々と到着される方が多かったようです。登録が完了した後、オリエンテーションが定刻の10時45分に始まり、今回のワークショップの主査である山道さん(日本電気)から開会の挨拶と今回のワークショップのテーマ説明、およびスケジュールやルールの確認がありました。

 その後、第1セッションへと移りました。最初のアブストラクトトークでは、発表者が3分間の時間の中で、内容の要旨や聞いて欲しいポイント、ディスカッションしたい点などを発表されました。

Photo2 昼食をはさんで午後1時開始のポスターセッションでは、すでに開始前から議論が始まっていて、参加者の意気込みが感じられました。この日は、ナノペースト、基板等の材料・基板分野から4件、はんだ、バンプ、樹脂接続等のはんだ・接続分野から5件、モジュール化、パッケージ等の分野から3件、光実装から2件、設計解析技術から1件の発表がありました。どのポスターも人だかりができ、また、『学会』/『セミナ-』・講演会と異なり、実際のサンプルを手に取りながらの活発な議論を交わし、熱心にメモを取る様子が見受けられました。

 午後4時からは、大西哲也さんによる「香港・中国華南地域での電子機器ベアチップ実装現場を知る」と題した特別講演を拝聴しました。大西さんは、香港・中国華南地域において、実装技術を指導してこられ、普段我々が見ることができない工場や試料の写真等を交えた講演をして頂きました。その中で、海外で仕事をしていく上で、情報伝達が重要であり、同じ漢字文化である香港・中国でも例外でないことを述べられました。そして、日本の実装分野では、材料・パッケージ・鉛フリー・基板・実装装置などで強い分野があることを示されました。諸外国が日本に対して期待していることは「技術」であり、我々は、その期待に応えるとともに、その重責を担うべく決意を新たにしました。

 講演後にバスで宿泊棟へ移動し、部屋割りが発表されました。夕食の懇親会までの時間で、温泉で汗を流してくつろいだ時間を過ごされた方が多かったようです。立食形式の夕食では、司会の小林さん(セイコーエプソン)のスピーチ、牧本JIEP会長の挨拶、傳田先生の乾杯の音頭によってスタートし、最後に橋本さん(富士通研究所)のスピーチによってお開きとなりました。今年は若手技術者の参加が多く質量共に満足できる料理にも助けられて、同世代の実装技術者同士の話に花が咲いていたようです。

 ワークショップの特徴である第2セッションは、午後8時半以降の各部屋に討論資料を持ち込んでのフリーディスカッションでした。このセッションは、技術者同士が本音で議論しあえる場を提供しています。実装技術の将来像、サンプルを見ながらの議論をしている部屋もあれば、お互いの会社の話からプライベートな話をしている部屋もあり、各部屋とも夜更けまで大いに盛り上がったようです。Photo3

 2日目の朝食では、参加者同士の交流も進んでおり、各テーブルとも会話がはずんでいました。その後、バスで発表会場に移動し、9時40分の第3セッション・アブストラクトトークから始まりました。この日は、材料・基板分野から3件、はんだ・接続分野から4件、モジュール化、パッケージ等の分野から4件、光実装から2件、設計解析技術から2件、MEMSから1件の発表がありました。

 今回のワークショップでは、基礎的な検討から応用検討、材料から設備まで実装技術の多くの分野について最先端技術に直に触れることができた有意義な2日間であったと思います。両日とも発表者の方も他の発表を見られるようにとクローズドタイム(30分)を設けましたが、2日目は第2セッションで議論が深まったためか、なかなか開放してもらえない発表者の方も見受けられました。

 ポスターセッション終了後の午後2時半より、傳田先生の「実装技術と半導体技術の大接近」と題した特別講演を拝聴しました。講演の中で本ワークショップの過去からの流れが紹介され、このワークショップで発表された技術の中から、実用化に至った実装技術が多くあったことが紹介されました。そして、技術の方向として、半導体前工程と実装技術の明確な境界がなくなっていくだろうとの説明がなされました。続いて、基板・パッケージ・ウェハの薄形化に関する技術について最新技術の紹介がありました。実装技術は、微細化技術に特化せざるを得ない半導体工程に対し、「何でもやってみることができる。我々実装技術者は幸福な立場にある。」という我々が普段の業務では忘れかけていたことを思い出させて頂きました。

 本ワークショップ終了後のアンケートでは、議論する機会の少ない技術者と議論する機会が得られ、有意義であったとの回答を数多く頂きました。当日配布された参加者全員の名刺のコピー集が普段接することがない異分野の技術者との接点となり、新しい仕事のきっかけとなれば幸いです。また、今年度は、広い発表会場を確保できた反面、宿泊棟と発表会場の移動にバスを用いたため、あわただしい面もありました。実行委員として慎重に検討し、来年以降のワークショップに有意義に反映させたいと思います。

 最後に、ご発表いただいた方々、ご参加いただいた方々、事務局の方々に感謝を申し上げ、本会の報告といたします。

 

WORKSHOP 2003 修善寺

 

×閉じる