学会を取り巻く環境がこの数年急変している。特に今年はミレニアムを迎えてボーダレスの世界的大競争が一層激化し、産業構造が激変している。日本経済はバブル時代の後遺症をいまだ引きずっているが、幸いに本学会の基盤であるエレクトロニクス産業は世界的情報化の追い風を受けて今後とも発展を期待できる。しかし、経営能力差による強弱企業への2極分化が加速しており、大学や学会もまったく同様な環境に直面している。本学会も今後さらなる発展を期して中長期ビジョンを策定し、事業環境の変化を先取りすべき時期になってきた。
工学系学会は定款にあるように一般に「該当分野の学術および技術に関する学会活動を通じて、該当分野の学術と産業の振興に寄与するとともに、それらを通じて社会に貢献する」という使命を有している(参照:各学会名簿の後部に定款が明記されている)。それがゆえに、公益的社団法人として税等に関する優遇措置を受けている。本学会は98年4月に合併・新発足したばかりの学会であるだけに、次のような緊急課題を抱えている。
①学会としての中長期ビジョンを策定し、産業構造激変を先取りする体制の確立。
②急速に台頭している新技術分野への適切かつ迅速な対処。
③公益的社団法人活動を支える健全な財政の維持。
①③への対処だが、現理事会には企業組織に見られるような「組織の中長期課題を分析調査して対策を提案する戦略的企画部門」が存在しない。このような学会の基本問題を討議して変化を先取りする諸施策を企画提案するスタッフ的新組織の早急な設置を望む。
②については有志(10-20人)の提案に基づいて、各専門技術委員会に属する現存の研究会と並列に時限研究会を新設して、新技術分野への迅速な対処を行う。その設置は、学会定款に反する場合を除いて技術運営委員会が早急に承認するものとする。ただし、時限研究会の予算は自前とし、自主的に運営する。1 、 2 年後にその活動結果に基づき担当専門技術委員会で継続、中止、他との統合等の意見を付して、最終決定を技術運営委員会に委ねる。技術運営委員会は学会全体の総合的技術活動を所管するとともに、各専門技術委員会に共通する事項を扱う(調整、統廃合、新設、改編等)。すなわち、各専門技術分野に関する業務は可能な限り、該当専門技術委員会に委ねるものとする。
その他、現存の各委員会、各専門技術委員会、研究会等についても従来の活動状況を考慮して統廃合等の早急な検討が必要なことは言うまでもない。現在、本学会では組織検討委員会が精力的検討を行いつつあり、今期中に答申が出される予定である。
早急な中長期ビジョン設定、その一環としての台頭する新技術分野への適切かつ迅速な対処、そして健全財政の堅持等に関して会員の建設的提案を期待している。
(JIEP理事,東海大学教授)
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.3, No.2)」巻頭言より