巻頭言

今後の学会の進むべき道

傳田 精一


 エレクトロニクス実装学会が発足して既に2年を経過した。この間実装技術に対する社会のニーズに後押しされている面もあるが、活動もほぼ軌道に乗ったように見える。ここでもう少し時代の流れを確認し、学会として間違いのない方向に進んでゆきたい。2年前2つの組織が合併したのは、実装に対する社会の要求を先取りした筈である。半導体や電子部品のパッケージ技術を中心にした活動とプリント回路技術に関わる活動は、それまでは別々の技術体系、産業構造、学術的検討として行われて来た。現在でも世界の趨勢はこれらの2つの流れを別物というイメージでとらえている。この点で我々は世界でも先端的なコンセプトを保っていると自負している。
 私の定義によれば実装とは、「半導体と電子部品の物理的、電子的な特性を人間が使うための綜合技術」なのである。半導体のパッケージを第一世代の実装と呼ぶなら、パッケージと基板を含んだ構造のすべてが、我々の取り組んでいる第2世代の実装である。それでは次の第3世代の実装とは何か。半導体のチップから機器までのすべてを包含し、現実にこの流れはIMAPS シンポジウムの論文などにはっきりと見えて来ている。第3世代では半導体のチップが既に外界の配線構造を想像して設計され、基板の配線は半導体の多層配線技術を取り入れている筈である。場合によってはLSIの多層配線は基板にその役割を譲るかも知れない。
 さてこのような時代に学会が適合しないと、存在価値がないし生き残れない。学会は理事メンバーが短期に交代するシステムを持っている。学会をリードする理事の方々が自分の専門にこだわらず、この実装の新潮流を把握してリードして頂きたい。半導体屋が基板技術を知り、基板屋が半導体技術を理解することが必要であり、そこに新しい発想が生まれるだろう。
 学会のひとつの理想は産学の共同活動である。私自身過去に産業界にいて現在大学にも籍があるのでこの感を強くする。しかし学会メンバーの中の大学の占める割合はまだ数%である。実装技術が長い間縁の下の力であったため、なかなか学界の協力が得られなかった。実装ではいい論文が書けないため、大学での研究テーマになりにくかったし、学生も興味を持ってくれなかった。今も基本的には変わってはいないが、実装研究による学位も増えてきていると言う。今まで鉛フリー問題、基板の電磁界解析、バンプにかかる応力計算などの面で大学の貢献は極めて大きかった。私見だが異種材料間の接着力、超微細加工技術、微小電極メッキの化学的理論など面白いテーマは山積している。ぜひ大学からのより多くの参加を希望している。

(JIEP理事,長野工科短期大学客員教授)
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.3, No.3)」巻頭言より


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