巻頭言

融合と発展と

逢坂 哲彌


  5月の総会におきまして2001年度本会会長に選任されました、微力ながら本学会発展のために力を尽くしたいと存じますので会員皆様のご援助をお願い申し上げます。
本分野の発展をはかるべく、本会は1998年より二つの学会が合併して新学会として再出発してまいりました。初代川西剛元会長、ひきつづき二代多田邦雄前会長がご尽力され、新学会としての基礎固めさらには融合化を推し進めてこられました。その成果として本学会の各発表会(学術講演大会、MES、ME Show等)は年々盛会となり喜ばしいかぎりであります。
  エレクトロニクス実装技術協会(SHM)が担ってきたシリコンデバイスよりの実装と回路実装学会(JIPC)が担ってきたプリント回路実装が、現実的には融合化しひとつの実装技術として発展するとの長期予想からエレクトロニクス実装学会が成立したわけですが、奇しくも1997年IBMからインターコネクション技術としての銅ダマシン法が発表されましたが、現在ではこの二つの実装分野がお互いに連携しあい、新しい実装技術として発展しだしていることは、我々の先達の的確な予想と判断があったことを証明しています。
  合併による会員数の推移を見ると合併時(1998年5月)の2,465人(正会員2,419+学生会員46)プラス342社(賛助会員)の規模から現在(2001年4月)の2,699人プラス248社を考えると個人会員は増加がみられ賛助会員は減少がみられます。さらに会計収支で実質的な収入支出をみると、収入の部で会費収入6,400万円、事業収入9,400万円弱、雑収入100万円強の規模(計16,000万円弱)に対し支出は事業費6,400万円弱、管理費8,200万円弱、その他の支出200万円(計15,000万円弱)となっています。通常の学会運営から考えると会費収入が管理費にそのまま対応する運営が健全であります。本会の特徴はむしろ管理費が会費収入を上回っているため学会の運営の観点からいうと正常な状態ではありません。しかしながら、本会の特徴を経費からみると事業費収入が飛びぬけて多くその結果全体として学会活動が余裕を持って運営されております。学会規模が3,000人弱の人数の場合にはちょうど大きすぎずかつ小さすぎずという規模となり学会として成立していくにはその運営が一番難しい規模ということができます。さらに本会は対象分野を企業の製品分野にオリエントした方向になっているため企業に属する会員が多いのが現状です。従って、業界の景気に大きく左右される学会といえます。これらのことを考えると、今後は回路実装分野を発展させるための学会であり、かつ製品直結の技術のみならずその分野の基礎的な技術革新を学問的に確立するための学会となることが急務と考えます。そのために学会規模としても最終的には5,000人規模の学会に発展することを考えながら種々の学会機構と組織を整備する必要があるでしょう。その結果、会員相互及び会員が望む分野の発展が保証されるに違いありません。
  いろいろなことを書きましたが、企業寄りの学会である状況にしては賛助会員数の減少が顕著であり、これはとりもなおさず社会の経済状況の反映になっていると考えられます。しかしながら携帯電話、パソコン等の電子機器の急激な進歩により大きな利益と発展を得ている企業も多く、我々の学会としてはそのような企業群を取り込むとともにその分野の研究開発を支える研究者あるいは愛好者の容易な交流の場を与えることができ、さらには将来予想と動向をとらえ、本分野の世界に寄与する方向への発展を示唆できる場を作れる学会として大きく発展したいと考えております。会員皆様のご支援、ご提案、ご批判を忌憚なくお寄せいただき、今後の発展をともに歩ませていただきたいと念願しております。

(社団法人エレクトロニクス実装学会会長 早稲田大学教授, 大学院理工学研究科委員長)
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.4, No.4)」巻頭言より


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