実装技術はもっと広い
西 眞一
1998年4月1日に旧回路実装学会(JIPC)と旧エレクトロニクス実装技術協会(SHM)が合併して本学会が誕生し6年目を迎えました。会員数は3千人を超え国内の工学系学会でも大きな規模となりました。本学会は「エレクトロニクス実装技術の幅と深さをさらに高める」という方針を立てて(川西初代会長)、21世紀の実装技術を担ってきています。
この5年の間に、産業構造が大きく変わってきています。半導体メ-カ、回路板メ-カ、電子部品メ-カ、実装組立メ-カが中国を始めアジア各国へ展開し国内の産業基盤の再編成が進まざるを得なくなっています。このような大きな流れの変化情報を会員の皆さまに提供し、産業界、大学や研究機関、国(経済産業省)や地方の行政機関との一層のcollaboration(協同)の役割を本学会が担わなければならないと思います。
また、今まさに『ユビキタス情報社会』が到来すると言われています。いつでもどこでもさまざまな情報が手に入りかつ送るという情報社会です。その情報の入力、保存、伝達、出力、制御の機能を実現するネットワ-クシステム機器がますます主役となるでしょう。それが、生産現場、流通、市場、家庭を着実に変えてきています。PDA(Personal Digital Assistant)が代表的な例でしょう。
従来の産業構造の変革が新たな市場を創出しつつあります。今まではなかった技術やアイデアを基に挑戦的なベンチャ-企業も生まれています。そんな変革の中だからこそ、新たに広がる技術領域をエレクトロニクス実装学会がカバ-し、その研究者と技術者を引き込むことが必要です。
従来の接続・組立技術のみに土俵を狭めずに、広く新規素材、材料、デバイス、メカトロニクスやバイオ技術とのハイブリッド化、コンポジット化、機能集積化を見据えたシステム機能設計をわれわれの土俵と考えましょう。PDAを例に取れば、機能性能はマイクロプロセッサはもちろんですが、実装技術で決まるのです。エレクトロニクス実装技術は単なる縁の下の力持ちではなく、システム設計技術と言えるのではないでしょうか。もっと実装技術者は、川上の技術領域に興味を持ち、勉強し、手を出し、同時に川下の技術領域および最終のお客さまのニ-ズをも推察することが求められています。本学会の活動も同様だと思います。
本学会の理事会はJIEP将来計画プロジェクトチ-ムを発足させ、さまざまな将来ビジョンを描いて、本会の拡大発展と共に、それは取りも直さず会員一人一人のメリットのために検討を開始しております。会員の皆さまのご意見もいただければ幸いです。本会常任理事/コニカ
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.6、 No.3)」巻頭言より
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