巻頭言

 

先端実装技術の飛躍に向けて

For Quantum Leap on Advanced Packaging Technology

 

佐藤 了平


   今日のIT化社会を支え、ナノエレクトロニクスデバイスを象徴するMPU/LSI、システムLSI、等において、チップ当りのトランジスタの集積数が1億個を超え、ゲート絶縁膜が数nmから限りなく1nmに近づきつつあり、現行方式によるSi半導体の物理限界が見えてきている。
   この物理限界をブレークスルーする次世代の技術として、現行技術の延長線でのシステムオンチップによるさらなる集積化・高機能化を進めるとともに、量子コンピュータや光コンピュータなど、方式から物質科学に至る研究開発が進められているが、これらの次世代技術とそれらに基づく次世代システム実現には、先端実装技術が必須であることには、ほぼ異存がないと思われる。ところがこの先端実装技術の本質を把握し、飛躍するには次の2つの視点が必須であると考えている。
   第1点はこれまでのように必要に迫られた中での高密度実装や、高機能実装では適用範囲が狭く、圧倒的な競争力と競争力を維持発展させるためのコアコンピタンスにはなり得ないからである。高密度実装することが最終目的ではなく、もっと大きな視点で捉えて、社会と組織及び個人に利便性や安全性とともに、感動を与え続けられる製品システムを実現し、それを発展させていくことが目的であり、そのためのコアあるいは本質的な先端実装技術を見据えて進めていくことが必要で、そのひとつが真のシステムインテグレーション(あらゆることを考慮した最適化(or適正化)とそれを実現する技術群)の実現であろう。これは政治や経済システムなど、他のシステムにも共通した問題である。キャッチアップ型のこれまでの日本においては、十分に育つ環境が整っていなかったと言えるが、大筋世界におけるフロントランナーとなった日本は個々の最適化ではなく、全体の最適化を明らかにしつつ、先端実装技術の開発を進めていくことが迫られている。
   第2点は、前記のシステムインテグレーションを実現していくには、あらゆる側面、すなわち先端技術、経済性、環境調和性、などをタイムスケジュールの中で適正化し、適正なシステムを実現していく必要がある。これは大変な仕事であり、個人はもちろん、一企業、一組織で実現することは不可能であり、多くの共同・協調作業が必要となる。現在、総合科学技術会議が中心となって、本会員も含めたあらゆる分野が横断的にかかわって、産学官連携が推進され始めており、今後積極的に推進する必要がある。これは大局的に見ればシステムインテグレーションの実現の方向に動き出したことになる。
   これらの視点で、大きな流れの中で、システムインテグレーション実現に向けた重要な技術として先端実装技術をとらえれば、何が本質なのか、開発すべきことは何なのか、が明らかになってくると思われる。そして、開発効率や、競争力、等の向上が図れるものと確信する。一例として、Si半導体の物理限界と経済性と、競争力、等を考慮していけば、システムインパッケージ等、先端実装技術の本質と重要性が見えてくるように。
   当学会がこれらの問題を解決して行くための役割を担っていくことはもちろんであり、会員の絶大なる支援、協力の下で相互に本質的な発展に寄与することを祈念する次第です。

本会理事/大阪大学教授
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.6, No.5)」巻頭言より


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