巻頭言

 

学会活性化と学会誌の強化をめざして

Aiming at more active JIEP and wider role of Journal of JIEP

 

銅谷 明裕


   今年度の学会誌編集委員会の委員長を務めさせていただくことになりました。日本のエレクトロニクス産業の競争力低下という暗い側面、新製品新市場における実装技術の役割拡大という明るい側面、そのような明暗交錯する状況のなかでの本学会への期待と学会誌の役割について述べさせていただきます。
   日本のエレクトロニクス産業の苦戦が続いており、IT機器の勝ち組みから日本企業の姿がどんどん消えていっています。このことは携帯電話、PC、サーバーという主要なIT機器市場で世界のベスト3に入っている企業が一つもないことに端的に表れています。事業面での弱体化は開発投資に影響を与え、技術開発の面でも弱体化を招いています。これは日本のお家芸と言われてきた実装技術でも例外ではありません。米国やアジア諸国における実装技術力(実装設計や先端実装要素技術)はすでに日本を陵駕しているものも数多くあります。
   一方で従来のIT機器の枠を越えた新しいエレクトロニクス市場が立ち上がりつつあります。デジタルコンシューマ、ロボット、カーエレクトロニクス等の市場です。これに対応して、技術内容も3次元実装、エンベデッド技術、光電気混載技術など実装技術の領域はどんどん広がっています。そして実装技術は、単なる接続組立の役割から電子情報機器を実体化する「材料、プロセス、設計、生産までを含むシステム統合技術」という役割になってきています。
   このような実装技術変革の状況に積極的に対応して、世界をリードするためには、学会活動を通じて足元から固めていくことが遠回りに見えても今必要なことです。産学が一体となった幅広い領域での取り組み、プロジェクトによる先端的な技術研究、若手研究技術者の育成による技術の底上げ等、産学の多くの実装技術者からなる本学会が果たす役割も小さくなく、さらなる活性化が急務と考えます。昨年度から将来計画プロジェクトならびに幹部会で活性化のための議論が進められてきました。その主旨は若手研究者・技術者の育成と教育、研究会活動の活発化等を重要課題としており、今年度活動に反映させていくことになっております。
   この中で学会誌に対する期待も大きなものがあります。今まで以上に学会員への情報提供力を向上させるとともに、インターネット活用等による世界に向かっての情報発信とグローバルな情報交流の場としての役割も広げていきたいと考えております。具体的なアイデア提案もすでにいくつか寄せられております。これからも会員各位の意見を汲み上げ、編集委員会で新たな企画立案検討を進めていき、着実に実行に移していきたいと考えます。会員の皆さまの建設的な提案を編集委員会までお寄せ下さることをお願い致します。

本会常任理事、編集委員会委員長/日本電気株式会社
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.6, No.6)」巻頭言より


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