巻頭言

 

光配線とメタル配線の共存へ

To the coexistence of metal wiring and optical wiring

 

三上 修


   大量のデータがネットワークを通じて流通し、また誰でもどこでも手軽に必要な情報を入手できるユビキタス社会の構築には、コンピュータやルータの処理速度はますます高速性が求められる。光ファイバ網が地球規模で敷設され、その広帯域性や高速性の際立つことは実証済みである。処理装置のなかのメタル配線に要求される性能も限界に近づき、この解決のため「光配線の導入」に高い期待が寄せられている。
   さて、本学会には13の技術委員会があるが、その最も新しいものとして、1994年に光回路技術を専門に取り扱う光回路実装技術委員会が設置された。初代の委員長は慶応大学の佐々木敬介教授(のちに千歳科学技術大学学長)であった。メンバーとして参加要請を請けた当時は、合併前の学会名がプリント回路学会であったので、光エレクトロニクス技術との関わりが頭に浮かばず、躊躇したことを覚えている。それ以来10年間の活動を通して、光技術が回路実装のなかで重要な位置を占めてきたように思える。特に数カ月ごとに本技術委員会が開催している公開研究会OPTは会員の皆さまに周知される存在になった。
   基幹光伝送システムに向けて築かれてきた光エレクトロニクスの実装技術は、経済コストや使いやすさの点、さらに光固有の問題点もあり、エレクトロニクスの実装技術とは雲泥の差があった。しかし研究開発の進展は著しく、日本オリジナルな新構造半導体レーザのVCSEL(面型レーザ)や透明度の高いポリマー光配線が登場して、この差は縮まりつつある。また自己形成光導波路というものを使った光はんだなるユニークな光接続技術も開発されてきた。
   東海大学の内田禎二教授によって、光表面実装技術の概念が提案されたのは1992年であり、すでに12年が経過した。また経済産業省の指導のもとに電子SIプロジェクトが1999年に5カ年計画でスタートし、そのなかで光電気実装が重要な位置を占めている。光電気実装まわりの標準化についても内外で具体的な進展があり、今年の6月には中野義昭東大教授を委員長とした標準化検討委員会によって、「光配線板通則」など7種類のJPCA規格がリリースされた。
   いつ光配線が実用化されるのかが、メーカや関連企業の関心である。専門雑誌には「今度こそ光配線」という主旨の特集記事が掲載されたりする。光配線とメタル配線が混載された光電気プリント板の登板が待たれる。電気と光の技術者がシームレスに扱える光エレクトロニクス実装技術を早急に確立していかねばならない。近い技術分野をカバーする学会は他にもあるが、光回路実装を真正面から主題としているところは本学会のみである。ぜひ国内だけでなく、広くアジアを巻き込んで、研究開発活動のホームグランドとして大きく育ってほしい。

本会常任理事、前・光回路実装技術委員会委員長/東海大学電子情報学部 教授
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.6, No.7)」巻頭言より


×閉じる