巻頭言

 

Jisso技術で世界をリードしよう!

Toward World Leader of Jisso Technology

 

牧本 次生


   昨今わが国の景気は少しずつ活気を取り戻しつつありますが、その背景には「民生機器のデジタル化」という大きな地殻変動があります。例えば巷間では、新三種の神器としてデジタルカメラ、DVD、フラットテレビなどのデジタル製品が挙げられています。しかし、民生機器のデジタル化はこれらの製品にとどまらず、カメラ付き携帯電話、ゲーム機、カーナビゲーション、カムコーダ、MP-3プレーヤーなどなど、大きな広がりを見せています。
   このようなデジタル民生機器の重要な基盤技術となっているのが、申すまでもなく半導体技術と広義のJisso(実装)技術であります。例えば、最近の携帯電話の持つ能力には驚かされることがあります。「こんな小さな筺体によくもこれだけの機能を詰め込んだものだ!」と感嘆せざるを得ません。これこそまさにJisso技術の粋であります。そして、わが国のJisso技術の強みが、これらの新製品の大きな強みにつながっているのです。
   2000年時点で携帯電話生産の国別シェアにおいて日本は20%のシェアしかありませんでしたが、最近のカメラ付き携帯においては75%のシェアを占めています。またデジタル・カメラでは65%、カムコーダでは81%のシェアをとっており、まさに圧勝の感があります。 このような事例を見ただけでも、新市場の競争力においてJisso技術がいかに重要であるかをうかがい知ることができます。
   さて、一般的には実装とは「装置や機器の構成要素となるものをすぐにも使えるように組み込むこと」を意味します。これを電子機器について言いかえれば「半導体チップや受動部品などをプリント板に搭載すること」となるでしょう。このような狭義の実装に対して、今日のJisso技術はもっと幅広いコンセプトを持っており、デバイス・レベル⇒パッケージ・レベル⇒ボード・レベル⇒システム・レベルの4段階からなるトータルソリューションとしてとらえられています。すなわちデバイスを最適な形でシステムに組み込むための総合技術体系であります。
   Jisso技術は日本の電子産業を中心にして長年にわたって磨きをかけられてきました。遠くは1950年代のトランジスタラジオ、70年代のVTRやウォークマン、80年代のカムコーダなど、日本のJisso技術を強みとして生み出されたものであり、これこそわが国の宝であります。
   Jisso技術の分野において、JIEPはわが国における唯一の学会であり、大きな使命を持っています。民生機器のデジタル化という大きな波に乗って、Jisso技術関連の技術者の力を結集して、この分野における世界のリード役を果たして行きたいと思います。そして、近い将来にJ・I・S・S・Oの5文字が世界の技術用語として定着することを願っている次第です。

本会会長/ソニー株式会社 顧問
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.7, No.4)」巻頭言より


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