最近,小生が敬愛してやまない大先輩二人のお話を続けて拝聴する機会があり,別々の会場で演題も異なるにも関わらず,その内容が奇妙に符合し,われわれ技術開発業務に携るものには重要な示唆を与えるものであると感じ入ったので,この場を借りて紹介をすると共に,僭越ながら考察をしてみたいと思う。
お一方は,「開発者は,1~2 年先の技術と6~10 年先の技術は追いかけたがるが,3~5 年先の技術への探求が不足している」,もうお一方は「研究開発(R&D)とは,Reality & Dreamである」という主旨のお話をされた。確かに,企業においては,現状のビジネスの延長線上に存在する向こう1~2 年程度の短期テーマは,事業存続のために必要不可欠な現実(Reality)である。また,もう一方で未来を想定し革新的な新技術に長期的に取り組むこと,すなわち夢(Dream)を描きこれを実現することは,開発者にとって重要な使命である。これら時間軸で言うと両端に存在する二極に開発リソースが偏在することは,否めない事実である。別な視点から消極的な見方をすると,短期テーマは,好むと好まざるとに関わらず組織から与えられる必達を義務付けられた現実であり,その現実での疲弊からの逃避の先として長期テーマとして夢を追いかけるという形態に転化するのもよくある図式であろう。しかしながら,企業の継続的な成長発展には,実は35 年先の開発が最も重要な要素であることは,技術者諸兄は,過去の経験から皮膚感覚で理解されていることであろう。なぜならば,Reality とDreamの狭間に存在する空間こそが,パラダイムシフトの宝庫であり,新機軸となる技術創生のステージとして相応しい変革点であるからである。
さて,本会が関わるエレクトロニクス実装技術に視点を移してみると,この35 年先の技術として,これほどまでにふさわしい技術はないということに気が付くのは小生だけではないと思う。実装技術は,半導体産業構造の中でバックエンド技術として成長して来た重要要素技術であるのと同時に,他技術分野を高度に組み合わせ,新しい価値を創造する融合技術でもある。実装技術はここ数年,極めて広範囲にその包含する技術領域のウィングを広げてきているが,超微細半導体,MEMS,ナノテクノロジに代表されるような新世代技術との親和性も非常に高く,これら夢の技術の現実解をReality とDreamの間隙空間に創出するOut put technology として大いに期待できると考える。
Reality のエピローグをDreamのプロローグとした「夢への掛け橋」としてJisso 技術が,ますますの興隆をみることを切に願う次第である。本会常任理事,総務副委員長/セイコーエプソン株式会社 生産技術開発本部 先端技術開発センター 部長
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.8, No.1)」巻頭言より
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