2002 ICEP

Session Summary


Invite

 Charles E. Bauer IMAPS会長より「DevicePackaging in the Year 2020 !」と題した講演が行われた。エレクトロニクス技術は, これまでの歴史を振り返って見ると, 今後も成長, 革新し続けていく分野であり (多分に元気付けの意を含む?), この観点から今後20年の展望が述べられた。キーテクキロジとして, フォトニクス, マイクロマシン(MEMS), バイオ, ナノ材料技術に関わる電子「システム」実装を取り上げていた。これらはいずれも目新しいテーマではないが, 夢物語がいよいよ現実のものになる時期であることが強調された。このためには, 材料, プロセス, 実装構造, 設計などあらゆる領域において, コスト, 製造, 標準化, 信頼性, インフラに関わる革新が必須であり(具体論はなかった), デバイス実装レベルでは, これまでのプリント配線板主体の実装を変える (捨てる) ことも視野に入れた研究開発が求められる。このとき, やるべきことはまだまだたくさんあり, だから元気を出そうという激励の意が, 報告者には感じられた。

(富士通研究所/橋本 薫)


Asia Session

 実装技術の研究開発は, 例えば地域コンソーシアムの形態で協同して進めていかねばならない, という考えのもとで, アジア諸国の連携を目指した試みとして「アジア」セッションを企画, 開催した。今回は, まず各国の現状把握を目的に, 中国, 香港, 韓国, シンガポール, 台湾において指導者の立場にある方々に, 実装技術に対するビジョン, 取り組み等について, それぞれお話しいただいた。これを契機としてアジアのコラボレーションが進み (協調と競争という問題は別に議論するとして), アジア発の技術を標準にしたワールドワイドな実装技術が開発されることを期待したい。今回は初めての試みということがあり, 趣旨等の理解が発表者ごとに異なっており, 講演内容も不統一の様子も伺えたが, 継続していけば実りの大きいセッションになると感じた。今後も継続していただきたい。なお, 内容は, プロシーディングスをご覧下さい。

(富士通研究所/橋本 薫)


WA1: High Speed/High Frequency Packaging

 ギガヘルツ(GHz)対応のパッケージ, 回路基板に関して合計 8件の発表が行われた。高周波化が急務となっている状況を反映して, 立ち見がでるほど多数の参加者があり, 活発な討論が行われた。講演内容は, RFモジュールの現状と将来展望(Prosmark), 高周波用有機基板材料技術(京セラ, 新光電気), LTCC基板による高周波パッケージの設計・シミュレーション技術(富士通), QFP/BGA のRF特性(I-Shou大), ストリップ線路による信号伝送の解析技術(東芝, 沖電気), スパイラルインダクタの設計・シミュレーション技術(日本TI)と, 高速/高周波実装の基本技術に関すものであった。

(富士通研究所/橋本 薫)


WB1:Pb-free

 最初に、招待講演の、"JIEP・低温はんだプロジェクト"の発表、その後引き続いて、7件の発表があった。
 材料強度特性の試験方法、材料設計のための平衡状態図などをPC上で作成するソフトの開発、フラックスを用いない新しいバンプの形成法の他に、今回は部品側の端子処理種類と鉛フリーペーストとの接合強度、信頼性について、より深く検討した話題が提供され、活発なディスカッションを行った。

(沖電気工業/澤井 秀夫)



TA1:Advanced Packaging

 米国PRCのホワイト氏による埋め込みLとC、テックサーチのバーダマン氏による最近のパッケージと動向、ツマラ教授による統合システムへ向けたデジタル電気信号回路、高周波回路、光学素子の集積化、シンガポールIMEのクリプス氏の銅電極への狭ピッチWB、新光電気の堀川氏の埋め込み酸化タンタルC、シンガポールIMEのチャイ氏による高性能WB-CSP、DTサーキットの本村氏のPWB上の放射線検知器についての発表があった。総じて聴き応えのあるセッションであった。

(松下電器産業/塚本 勝秀)


TB1:Plating

 めっき技術に関するセッションで7件の論文より構成されている。その内3件は、無電解Au/Niめっきに関するもので、最初の1件は福菱セミコン/三菱電機の発表で、Au/Ni-P無電解めっき膜へのはんだ付けの信頼性に関するもの、次の1件は関東学院大の発表で、Pd触媒を用いた選択的なNi無電解めっきに関するもの、さらにもう1件は、ダイワファインケミカル/甲南大学の発表で、地球環境保護に適合するシアンフリ-Auめっきの開発に関するものである。次は田中貴金属/神奈川大学の発表で、無電解Ptめっきの開発とそのメモリトレンチキャパシタへの応用に関するものである。さらには関東学院大より、貫通スル-ホ-ルと有底ビアのCuめっきによる穴埋めおよびビアフィルに関し、添加剤と電流密度の最適化で対応した報告があった。次の1件は、信州大学/新光電気の発表で、50μm(100μmピッチ)と100μm(200μmピッチ)のフルマトリックスのストレ-トウォ-ルタイプとマッシュル-ムタイプのPbフリ-対応Sn-Agはんだバンプを4種の電解めっき浴にてガルバノ/ポテンショ2手法で形成し評価した結果を報告している。最後の1件は、奥野ケミカルの発表で、Cu箔上にNiめっきをすることなくダイレクトに無電解Auめっきを形成する技術開発とそのはんだ付け特性評価に関するものである。

(ウェイスティー/福岡 義孝)


TA2: Optoelectronics

 光通信用モジュール実装に関するサーベイ論文を始め,超大容量のスイッチングシステムからマイクロミラーの製造法までの幅広い分野の光実装技術が計6件報告された。
 米Prismark Partners社からは通信用光モジュールの技術動向が多くの例を引きながら概説された。NTTからは2件の発表があり,WDM技術を駆使した5Tb/sのスループットを有する大規模スイッチングシステムの構成法の提案と実証,並びに拡張性の高い光バックプレーンの構成技術が報告された。また,NECからは異方性エッチングで形成されたシリコン基板上のピラミッド形ピットを型として金属めっきで作製した100×60mmのマイクロミラーが提案された。基板上にはんだ付け可能なため実装の自由度を向上する上で有力な部品となる可能性がある。セイコーエプソン社からはポリイミドフィルムをベースとした光部品と電子部品のハイブリッド実装技術,台湾の淡江大学からはMultimode Interferenceを応用した光論理回路(XOR)の新しい構成法がそれぞれ提案された。発表された論文はいずれもオリジナリティの高い優れたものであった。
 韓国KAISTからの面発光レーザ(VCSEL)実装に関する論文1件が取り下げられたのは残念であったが,年々,質・量ともに充実してきており本会が光エレクトロニクス実装分野の主要な発表の場となりつつあることは喜ばしい。

(フジクラ/安東 泰博)


TB2:Materials

 Flip Chip/ウェハー接合技術:Flip ChipのUnderfill剤の流動時間の測定、大口径・薄厚ウェハー用Underfill Filmの切断性や基板との接着強度や接触抵抗、接着後に除去不要の熱硬化性FluxによるFlip Chipの接着強度が討論された。
 新熱可塑性樹脂プリンタ点字の提案と従来の紙点字との比較検討、RuO2・CB 混合系で正/零/負の任意のTCRが得られる樹脂系厚膜抵抗器、炭素繊維フィラメント使用の熱線CVDでSi単結晶ウェハ上に形成されたCNX誘電体薄膜の特性、骨格状セラミック/アルミニウム高熱伝導率材料の熱伝導・放熱特性が発表された。

(武蔵工業大学/金子 郁夫)


TA3:Interconnection I

 当セッションでは,異方導電性接続技術に関し,接続条件の最適化に関するシミュレーション技術,異方導電性接着剤と導電性粒子の 最適化技術,及び,NCP(Non Conductive Paste)によるプラスチックフィルムLCD電極へのベアチップ接続技術の計3件,レーザー加熱による接続用のはんだボール形成技術に関するものが1件,フリップチップ接続におけるアンダーフィルを含めた数値解析技術が1件,アンテナ・スイッチモジュールへのSAWフィルタの搭載に関するものが1件の合計6件の発表があった。

(シャープ/松原 浩司)


TB3: Simulation

 シミュレーション(高周波解析4件、熱解析1件)に関して5件、欧州の共同研究開発体制の紹介に関して1件の発表があった。熱解析は、計算速度を高める提案であった。また、電磁界解析については、FDTD法を用いた時間領域、周波数領域の発表が多かった。CPUの速度がGHzを越える今、高周波実装は今後より重要になっており,本セッションに見られるアプローチは不可欠である。
 今後本分野の研究を加速する為には、既に電磁界解析技術応用について長い歴史のあるマイクロ波、アンテナ分野との連携が必要であると感じた。

(東芝/高木 映児)


FA1:3D Packaging

 本セッションでは7件の発表が行なわれた。岡山大/ASETからは積層チップ間接続のためのヴィアホール充填技術、ASETからは20μピッチのヴィアを介したチップ間接続技術、ミスズ工業/東芝/信州大学からはパッケージ積層におけるボード実装信頼性の向上技術、Asymtekからは積層チップに対するアンダーフィル充填技術、凸版印刷からはBGA基板用多層テープについての発表が行なわれた。現在のチップ単体の積層からヴィアを介したチップ間の電気的な相互接続、さらにはウエハーレベルの接合へと進展していく 3D Packaging の研究開発の一端が示された。

(京セラ/植垣 祥司)


FB1:Interconnection II

 発表も三日目に入り、出席者はやや減少したように感じられたが、インターコネクションのセッションでは六つの国、地域から七つの論文が発表された。
 まず、依頼講演として、最近の日本における新しいフリップチップ接続技術が紹介された。フィンランドからはACP接続、シンガポールからはプロジェクト研究による、高機能フリップチップフレックスBGAの詳細な報告があった。基礎的な研究としては接続部の歪の計測、In-Au接続の可能性、ソルダーペーストの熱解析、微小Snボールの生成と直接搭載技術が日本、オーストラリア、台湾、米国から発表された。

(新光電気工業/若林 信一)


FA2:Design and Testing

 本セッションは、微細バンプピッチ対応のテストプローブ構造と機構についての発表が2件、短時間でBGA構造ICのオープンピンを低コスト回路設計手法を用い検知する方法の発表が1件、CAD/CAE等の設計技術(手法)が今後どの様に進むべきかを具体的なデザイン手法を用いながら提案した発表の計4件であった。1つのセッションとしては幅広い内容であったが、今後SIPを代表とする先端パッケージには欠かせられないプローピング技術、独創的な設計技術、将来の設計指針など有意義な発表内容であった。

(三菱電機/岡 誠次)


FB2:Thermal management

 本セッションは、光モジュール熱設計について1件、高熱伝導材料について3件、合計4件の投稿があった(発表は1件キャンセル)。光モジュールは、温度制御用ペルチェ素子を含めた熱設計手法であり、実測結果をシミュレーションに反映させて高精度な予測を実現している。このような実用的な設計手法は、非常に重要である。高熱伝導材は、チップとヒートシンクの接着材についての提案であり、特に金属と樹脂の複合材により、熱伝導性と応力緩和性を両立している構造は興味深かった。
 LSI発熱量の増大と筐体の小型化により、電子機器の冷却は製品競争力の差別化技術になってきている。従来にも増して熱・冷却において新しいアイデアが要求されてきており、益々多くの新規提案が望まれる。

(日本電気/北城 栄)


FA3:Substrates

 本セッションでは、設計、製造に関して、グランドプレーンと電磁電磁放射に関する検討(ASET)、Electro Scientific Industries のレーザビア形成や、ナノ多孔質フィルムを基材に用いた発表(東芝)があった。東芝の発表は、従来の方法とは全く異なる基板製造方法であり、聴衆から驚きの声と多くの質問が寄せられた。また、材料に関してエポキシ/芳香族ポリイミドフィルム(新光電気)、液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス)の発表や、ハロゲンフリー基板の問題点である吸湿後はんだ耐性に関する発表(Institute of Microelectronics)もあった。
 基板技術は、電子機器の性能を左右する重要な部品の一つであり、6件とも聴衆の関心が高く活発な意見交換が行われた発表であった。

(日立製作所/宝蔵寺 裕之)


FB3:Reliability

 Reliability のセッションにおいては、有限要素法、または、これをベースにした構造解析を行なうのが定番になりつつあり、本会においても発表の骨子を成していた。また、それぞれの機関で開発されたパッケージ方法への適応が検討されており、実際のパッケージ設計において、開発期間の短縮、開発費用の節約に貢献している様子もうかがえた。
 課題として、一つ。破壊点の定義と根拠を明らかにすることが求められる場面が幾度かあった。本来は破壊現象を伴う臨界点を、FEMのシミュレーションに反映させることは難しいが、十分に考察を行ない、取りこむことが課題として残った。

(TDK/内木場 文男)


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