MES2003開催報告
  2003年10月16日(木), 17日(金) / 大阪大学 コンベンションセンター

2.会議の概要
(2)各セッション報告 (文中敬称略)

 


 1A1:鉛フリーはんだ 1 
   鉛フリーはんだ実装に使用される汎用系としてのSn-Ag-Cu合金に関する研究発表4件であり,機械的および金属学的特性,衝撃落下試験を含む信頼性に係わる検討,鋳造のままの状態で引張試験を行う新たな引張試験方法,及び鉛フリーはんだによる銅の溶解に関する検討など鉛フリーはんだの各種特性を広範な観点から試験した結果が報告された。
   Sn-4Ag-0.5CuとSn-3Ag-0.5Cuの機械的信頼性を評価した研究では,低銀の方が金属組織や長期信頼性の観点から優れているとの結論が述べられた。次の研究ではSn-1~3Ag-0~1Cuを用い,温度サイクル試験及び接合基板の落下衝撃試験を行い,温度サイクル試験では2Ag合金が,落重衝撃試験では1Ag合金が優れた特性を示すことが述べられた。
   はんだの微小引張試験片として,鋳造凝固のまま,切削加工を施すことなく引張試験片が可能な試験片作成法を考案し,微小直径の鉛フリーはんだの引張試験が行われ,従来の結果との比較検討がなされた。微小試験片は金属組織が実際の継手部と類似であり,従来の試験片とは力学的特性が異なることが示され,今後,この種の方法によるデータの蓄積が重要であることが示唆された。
   4つ目の発表は,銅箔の溶解現象に及ぼすはんだ組成の検討を行ったもので,Sn-Ag-CuおよびSn-Cu-Ni系で行われ,その特徴と界面組織などの検討結果が紹介された。
   MES初日の冒頭のセッションにもかかわらず,熱心な参加者と共に有意義な討論が展開できた。

(竹本 正/大阪大学)


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 1A3:鉛フリーはんだ 3 
   本セッションは、1A1、1A2にひき続き鉛フリーのはんだに関する発表が行われた。前半の2件は最近問題視されている高温多湿雰囲気使用下で、それぞれ、めっきおよびフラックスを含んだはんだが接合部特性に及ぼす影響についての発表であった。
   また後半の2件は、Sn-Zn系はんだについて、はんだ組織およびその接合部界面組織が接合部特性に及ぼす影響について考察を行った研究であった。いずれの発表も単なる結果の羅列にとどまらず、各々の現象に関する考察が充実しており、またそれに対して中身の濃い質疑応答もなされた。
   昨年度に比べて鉛フリーはんだに関する研究発表は減少したが、それは単に関心が薄れたのではなく、各企業の完全鉛フリー化を目前に控えて、研究が成熟段階に入ったことを印象づけられた。

(上西啓介/大阪大学)


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 1B1:回路基板 1
   本セッションでは、実装回路基板の材料およびプロセスに関する最新技術の発表が行われた。全体としては高速・高密度化に対応するための技術内容となっており、初日最初のセッションにもかかわらず立ち見が出るほどの盛況ぶりであった。
   1件目は液晶ポリマーによる銅張積層板に関する報告で、優れたピール強度と高周波特性が注目される。2件目はガラス織布を用いたALIVHビア接続に関するもので、織布の開繊処理とレーザー条件の最適化により良好なビア接続を実現している。3件目は銅バンプ形成により、従来のフィリングめっきによるフィルドビア構造の課題を解決している。4件目はRCCの銅箔と樹脂を一括してビア形成するためのプロセス技術に関するもので、すでに量産に適用されているとのことである。

(馬場和宏/日本電気)


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 1B2:回路基板 2 
   このセッションでは,ビルドアップ基板,配線材料,光配線などで,新たな4件の発表が行われた。
   1件目は,ビルトアップ基板の形成過程でのエッチングによるレジスト下の銅の溶解現象をモデル化したシミュレーションと実測との比較から検討を加えるもので,ファインピッチ化への基礎技術を開拓する解析として面白い。2番目は,同じくビルドアップ基板であるが,高周波伝送特性を要素に分けて検討を加え,やはり基礎式を導出するものとして興味深い。3番目は,光コネクタの新たな開発を報告するものとして意味があり,最後の発表は,フェムト秒レーザーを用いた光導波路形成を高分子材料のフッ素化ポリイミド系で成功したものとして,今後が期待される。いずれの発表にも沢山の質問が続き,時間を超過する程であった。

(菅沼克昭/大阪大学)


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 1B3:ナノテクノロジー 
   本セッションでの発表内容は、金属ナノ粒子に関する研究および技術開発が中心であった。井出(大阪大学)は、Pb-Sn系高温はんだの代替として有機系銀ナノ粒子ペーストを用いた接合技術の開発への基礎的な知見を与えた。ナノ粒子の粒系変化によりはんだ接合に匹敵するせん断強度が得られ、ナノ粒子の役割や接合部のボイドの影響について討論された。
   中許(大阪市立工業研究所)は低コストの銀ナノ粒子ペーストを開発し、銀含有量や有機成分の最適化について発表した。ポリイミド基板上へのパターン形成や低比抵抗を実現し、微細回路への技術適用を示唆した。長谷川(甲南大学)は、金ナノ粒子の合成やOTS上配線形成について発表した。発表後、主に合成方法や合成機構について討論が集中した。池田(甲南大学)は、イオン交換反応により作製した銅粒子分散ポリイミド樹脂上への無電解銅めっき膜の形成について述べた。イミド化および熱処理温度について工業的反応を視野に入れた質問がなされた。
   最後にセッション会場には、多くの参加者の皆様方が詰めかけ空席がなく立ち見が出るほどで“ナノテクノロジー”を利用した実装技術への関心の高さが伺えた。

(着本 享/京都大学)


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 1C1:評価・シミュレーション 1 
   4件の発表からなる、設計・評価・シミュレ-ション技術セッションであった。
   2件は、横浜国大からの発表であった。そのうちの1件は、ABAQUSを用いた弾塑性・クリ-プ解析により、ボ-ドに実装したBGAのはんだ接合部の信頼性に影響する因子が何かを明確にした。さらにもう1件は、携帯電話用ボ-ドにCSPを実装した時の、落下衝撃信頼性
評価に関する発表で、落下高さにより3つの破壊形態があることを確認するとともに、その評価の有効性を明確にした。
   他の2件は、いずれも検査手法に関する発表であった。1件は、コベルコ科学研究所の発表で、超音波の伝播経路をモデル化し、近似波形を利用し、非破壊で半導体パッケ-ジ内部の剥離検査をする手法であり、剥離深さを予測可能であるものの、剥離面を厳密に特定するには切削法に頼らざるを得ないことを明らかにした。もう1件は、日立建機ファインテックの発表で、ボ-ド上に実装した電子部品を非破壊でかつ非水浸で超音波により剥離箇所を検査する手法であり、高分子膜材料と多孔性カバ-を有効に利用することにより、部品実装状態のボ-ドを非破壊・非水浸で良好な解像度を得ることを達成可能な剥離検査の実用化に目処をつけた。

(福岡義孝/ウェイスティー)


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 1C2:評価・シミュレーション 2 
   本セッションは4つの発表で構成され,発表者全員が出席し、予定通りに行われた。
   本セッションの主な内容はCAEなどのシミュレーション実装プロセス,あるいは実装形態・実装構造の複雑な非線形挙動の解明と近似評価に関する技術である。特に実装プロセスにおいて発生している部品の反りあるいは伝熱条件のなどの同定方法などが取り上げられている。その中に最適なリフロー温度条件を求めるために,実験とシミュレーション技術を融合したリフロー熱解析システムを開発する取り組みについて報告され,近似解析評価と実験計測値の比較を用いて手法の有効性と信頼性について検証されたことについて報告された。また,CAE技術を用いて接着剤の硬化収縮・クリープ挙動を考慮して,高感度センサーフレームの変形の経時的変化の発生メカニズム,およびフレーム変形とセンター特性の関係を明らかにし,その結果を踏まえてセンサーの最適設計を行った結果が報告された。
   FEMの電気-熱伝導連成解析を用いて,パワーデバイスのリードフレームの放熱特性について評価し,従来のワイヤボンディング方法式と比較することによってリードフレーム形式の放熱効果の有効性およびチップシュリンクの効果が確認され,さらに信頼性に対するはんだ接合層の厚みの重要な影響度を明らかにした結果について報告された。
   また,シミュレーション技術を用いて新しい実装用樹脂をコアとするはんだ接合材料の熱伝導特性の評価方法と結果について報告された。

(于 強/横浜国立大学)


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 1C3:設計・評価技術 
   日本電気の井上氏の超高密度薄型基板(MLTS)の電気特性評価に関する報告では、金属支持体上に形成したコアレス片面ビルドアップ配線板は、3次元電磁界シミュレーションの結果、伝送路の連続性の確保に有利であり、優れた高周波特性および周波数帯域の増大の可能性が示唆された。AET Japanの上田氏は、BGAデバイスおよびPCBインターコネクトの電気特性を検討し、高速パルス3Gbpsではスパイラルコンタクトソケットの使用が伝送特性に有利であり高速伝送においてピンおよびスタブ長を伝送波長の1/4λ以下にすることにより伝送特性が良好となることを報告した。宇都宮大学大学院の佐藤氏は、スーパーコネクトレベル(ライン&スペース10μm以下)の微細配線におけるマイグレーションの成長過程の解析法として電気化学的インピーダンススペクトロスコピーを適用し、マイグレーションに至る場合に電荷移動抵抗が減少することから、マイグレーションの予測や初期不良の検出の可能性を報告した。ASETの芳賀氏は、IC搭載基板における不要輻射とその低減について、輻射の発生機構および輻射低減について検討し、外周部に2つのグラウンド層を縦配線で接続することにより、最大輻射値で約20dBの低減効果があることを明らかにした。

(縄舟秀美/甲南大学)


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 1D2:実装プロセス 
   実装プロセスのセッションは、ほぼ満席の参加者を集め、4件の講演を行った。1番目は戸谷氏(デンソー)からで、FPCの接続工法に関する発表である。はんだ接合をアルカン類(溶剤)を使ってフラックスレスで接合し、かつ、FPCの基材を熱可塑性樹脂と非熱可塑性樹脂を配合したものを用いて、銅泊の接着性を改善し接合部の一体化を図っている。コネクタレスの新しい提案である。2件目はサンミナSCIシステムズ・ジャパンの鳥山氏がフレキ基板へのはんだフリップチップ接合に関してリフロー後のスタンドオフ高さを確保するためのフラックスの選定とそのプロセスについて発表した。FC用電極がソルダーダムのないOpen Windowの場合に有効である。次の折井氏(サンミナSCIシステムズ・ジャパン)の発表も鳥山氏と同じ課題に対するアプローチで、,はんだバンプを融点の異なる2層構造のメッキにより形成することで、FC実装後のスタンドオフ高さを確保している。最後の発表は富士通電機の谷口氏からで,インサート材にInを用いて,Cu同士を接合するプロセスに関して,In膜厚と接合温度に対する接合強度と界面の解析結果が示された。基礎検討段階であるが,今後,工業的な見地からさらに研究されることが期待される。

(齊藤雅之/東芝)


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 1D3:生産技術・装置・システム 
   1D3-1は、環境低負荷な洗浄方式を対象とした、酸性電解水を用いた環境配慮型精密洗浄技術の開発に関する発表。リードフレーム等のプレス加工品などに対して、これまでの石油系洗浄剤による脱脂と界面活性剤入りアルカリ性洗浄剤による洗浄に変わる可能性を示している。
   1D3-2は、半導体パッケージなどの多品種少量生産の生産システムの実現に向けて、オブジェクト指向による生産システムの開発とパッケージ・実装技術への適用に関する発表。工程機能単位のオブジェクトをセル化して、追加などのシステムの進化に対応できる自由度を持ったシステムとして仕上げている。
   1D3-3は、高密度電子部品の高精度加工に向けて、電子部品材料の高周波振動打ち抜き加工特性に関する発表。高アスペクト比のリードフレームの精密プレス加工に高周波を加えた高周波振動複合プレス加工で、リード捩れ角度を低減できるなど、高精度化の可能性を示している。
   1D3-4は、急速に普及する液晶パネルの高品質・高生産性の実現に向けた表示ムラ検査技術に関して、液晶パネルのテスト用センサーの開発に関する発表。これまで官能量に関わる検査の自動化はきわめて困難であったが、レーザを照射してその透過光を高感度で検出し、その強度の差が感応強度差に対応していることを確認し、表示ムラ検査の可能性を示している。
   以上、4件の発表があったが、内容的にはかなり高度な技術開発の成果を示しており、大変有意義であった。但し、かなり異なる分野の発表であったため、出席者が限られてしまった。有意義な内容を多くの人に共有してもらうために、今後プログラムの組み方を工夫する必要がある。

(佐藤了平/大阪大学)


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 2A1:半導体チップ実装 1 
   「半導体チップ実装Ⅰ」では、超音波を使用した、チップオンチップ・チップオンFPC実装という内容で、個人的にもとても興味深い4件の発表があった。
   1件目は「接着樹脂層形成チップと超音波接合法を用いたChip-On-Chip集積化技術」として、あらかじめ子チップ側に接着樹脂層を形成し、Auバンプを形成した親チップに超音波で接合する工法のプロセスと接合のメカニズムの発表があり、従来法にくらべ、設計・生産性の向上の可能性が示された。2件目は「超音波フリップチップボンディング技術を用いたチップオンチップ構造パッケージ開発」として、AuバンプとAlパットを超音波接合した際の接合性とチップ間バンプ接合部の信号遅延時間の検証結果が示され、超音波によるAu-Al接合の有効性が示された。3件目は「超音波フリップチップ接合における課題解決とFPC基板への実装例」として、両端支持構造の超音波エンジンを使用した設備での接合の検証から、難しかったフレキ基板への超音波実装の可能性が示されCISチップ実装等の事例紹介があった。4件目は「アンダーフィル材の先塗布によるAu-Sn接合フリップチップ・ボンディングCOF技術開発」として、ベアチップのパットピッチの微細化に対応した先入れアンダーフィル樹脂の開発、信頼性検証等の報告があった。
   各発表の後、積極的な質疑応答があり、ベアチップ実装の3次元/SIP化・フレキ実装等への応用に向けた関心の高さがうかがえた。

(江間富世/パナソニックモバイルコミュニケーションズ)


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 2A3:半導体パッケージ・モジュール 1 
   このセッションでは、今SiPとして大きな関心を集めている、チップや受動素子の組込みに関する先進的な取組みが発表された。
   先ず、新たに開発した低熱膨張ポリイミドを使った薄膜インターポーザによるパッケージング技術が示され、3Gbpsを越える信号伝送が可能であることが確認された。次にシリコン基板上に±1μmの位置精度でGaAsチップを搭載し、配線とインストラクタを一括形成する技術が発表された。新しいモジュール技術の可能性が示された。3番目はパッケージ積層型のSiPの開発に関するもので、3段積層の例が示され、熱応力による変形や障害発生が懸念されるため、丁寧な熱応力シミュレーションを行い、チップの破壊が起こらないことを検証した。
すでに実用のレベルであるとの発表であった。最後は銅電極を有するウエハの裏面から、電極プラグ出しするプロセスがしめされた。
   これらの4件の発表はいずれも重要な技術で、今後の展開が期待される、可能性の高い技術であった。

(若林信一/新光電気工業)


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 2A4:半導体パッケージ・モジュール 2 
   本セッションでは, 今後のパッケージの要素技術となる内蔵素子の検査法ならびに薄膜キャパシタ材料などについて合計 4件の発表が行われた。この分野への関心の高さをあらわすように, 本講演会の最終セッションにも関わらず, 最後まで多数の参加者を得て, 活発な議論が行われた。
   キャパシタ内蔵基板の製造プロセス途中での検査法としてテストクーポンを用いる手法が提案され,その実用性が示された(日立化成)。また, 内蔵キャパシタ材料を目指したSrTiO3について, 異常粒成長の抑制ならびに熱膨張係数の調整法を工夫し, 高周波キャパシタとしての可能性が実証された (NEC)。また, DC/DC コンバータの小型化を目指して, ベース基板として従来のプリント配線板に替えてシリコン基板を用いることが試みられ, ±5%の精度の抵抗およびダイオードを形成する技術が開発された(富士電機システムズ)。さらに, 高速信号伝送のためのスタックトペア線路について新しい知見が報告された。カレントスイッチ型差動インバータ対応の伝送線路型電源グラウンドペア線路は, バイパスキャパシタなしでも 3 GHz動作に対応可能な電源であることが実証された。

(橋本 薫/富士通研究所)


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 2B1:ウェットプロセス 1  スルーホール・ビアフィル・バンプ形成
   本セッションは2日目の朝一であったにもかかわらず会場は、満席であった。また本会場は昨日の来場者の混雑を予想し、後部席の半分はテーブルを外し椅子のみに変更した配慮が功を奏し、全聴講者が着席できた。本セッションはウェットプロセスの中でも、業界で話題の電気銅めっき法によるビアフィリング3件とマイクロバンプ形成法1件の合計4件の講演が行われた。ビアフィリングでは、添加剤の効果と高速化の研究、高アスペクト対応貫通孔のフィリング法の研究、現場管理を目的とした電気化学的モニタリング法の提案であり、バンプ形成は銅めっきをコアとした次世代バンプの新規形成法の研究であり、活発な質疑・討論がなされた。

(中岸 裕/奧野製薬工業)


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 2B2:ウェットプロセス 2  無電解めっき法
   11時15分から開始した“ウエットプロセスII”のセッション会場はほぼ満席の状態であった。2B2-1の発表は異方性ニッケル成長を応用したバンプの形成についての研究報告が行われた。2B2-2および2B2-3は無電解めっき用のSn-Ag-Pd系触媒およびAgナノコロイド触媒によって選択性のある析出が可能となる内容の発表であった。2B2-4は酸化チタンの光触媒効果によるパターニングとコバルト錯体を還元剤とする無電解銅めっきの組合わせによって環境にやさしいコーティング技術の開発に関して報告が行われた。
   いずれの発表に対しても質問は2~3件にとどまり,質疑応答は低調であった。

(松岡政夫/立命館大学)


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 2B3:ウェットプロセス 3  ULSI配線技術
   本セッションではウェットプロセスによるULSI内部配線に関する4件の報告が行われた。まず、バリヤー層として無電解NiBめっきを施す際のレジスト上への異常析出を抑制する条件についての研究、および無電解NiBめっきバリアー一層とCuめっき配線を用いた全湿式法によるULSI配線の可能性を示した研究の2件が早稲田大学のグループから報告された。次いで甲南大学を中心とするグループから、ビア、トレンチへの充填と不溶性陽極の適用を可能にする新しいCuめっきプロセスについての報告がなされた。最後にULSI内の配線に一部インターポーザ基板配線の機能を受け持たせるためのCuの厚めっき技術について日本電気のグループから報告された。本セッションの内容は実装技術の今後の重要課題であるULSI内部配線をめっきプロセスの側面から展望する示唆に富んだものであった。めっきプロセスの詳細とULSI配線の技術課題の両面からの活発な議論がなされれば、より実りの多いセッションになったものと思われるが、会場からの発現が少ないのが残念であった。

(藤原 裕/大阪市立工業研究所)


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 2B4:ウェットプロセス 4  実装材料
   本セッションでは、実装材料に関する4件の発表があり、質疑応答も活発で関心の高さが伺えた。日立電線の松浦氏および珍田氏によるセミアディティブ法およびエッチング法による20μmリードピッチCOF(Chip on Film)の作製に関する発表では、セミアディティブ法に関しては配線高さの均一化と配線上面の平滑化がポイントとなり、銅めっき浴の添加剤、特に平滑化(レベラー)の選定と管理が重要であり、リールtoリールでの製造の可能性が報告された。また、銅張板のエッチング法では、銅箔の液晶配向指数によりエッチング特性が異なり、FCC構造の最密充填面である(111)面の優先配向をもつ銅箔は等方エッチングの傾向が強くリード底部の裾拡がりが大きくなることが報告された。三井金属鉱業の栗原氏はファインピッチパターンの無電解スズめっき皮膜から発生するウイスカについて、めっき数日後に発生成長する新性ウイスカと無電解スズめっき時に発生し成長のない擬似ウイスカが存在し、それぞれの発生要因が報告された。新光電気工業の酒井氏は、カーボンナノファイバー複合ニッケルめっきの熱放射性について、ニッケル単独めっきに比べ、放熱性が優れている旨の報告がなされた。

(縄舟秀美/甲南大学)


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 2C1:実装材料・部品 1 
   本セッションでは実装部品に関する4件の発表があった。
   1件目はアルミナ基板上にLとCをそれぞれグリーンシート多層工法と厚膜凹版転写工法で形成したLC内蔵基板に関するもので、従来法よりもLC素子の特性ばらつきが小さくなることが報告された。2件目は高周波用同軸ケーブルに関するもので、中空構造とすることで良好な高周波特性が得られることが報告された。3件目は、レーザ照射によるはんだ吸い上がりの防止に関するもので、Ni/AuめっきへのYAGレーザ照射効果が報告された。4件目は非導電性フィルムを用いたフレキシブル基板の接続に関するもので、回路に微細な凹凸を形成する工程と熱硬化済みの樹脂フィルムを用いることを特徴とし接合信頼性が高いことが報告された。どの発表に対しても活発な質疑応答が行われた。

(新井 進/信州大学)


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 2C2:実装材料・部品 2 
   「高解像性を有する感光性フィルムの開発」(中村・稲葉・幡野・川里・寺本)では,次世代インターポーザー基板用ソルダーレジスト用途に、高解像性・高耐熱性・高信頼性を有する感光性フィルムPDF300G の開発状況を報告した。
   「樹脂の表面改質を利用するポリイミド樹脂上へのITO系薄膜の作製および光・電気特性」(田口・赤松・縄舟)では,ポリイミド樹脂上にITO薄膜が生成すること、膜の抵抗値が従来の報告値より十分大きいことを示した。
   「磁性ナノ粒子複合ポリイミド樹脂の微細構造制御および垂直磁気特性」(新開・赤松・縄舟)では,KOH処理によるポリイミド樹脂の表面改質、イオン交換法によるニッケルイオンの吸着、吸着ニッケルイオンの水素還元のプロセスにより表面改質層にニッケルナノ粒子を分散させることに成功した。
   「電着塗装法によるポジ型感光性ポリイミド膜の形成」(上村・大山・友井・板谷)では,電着塗装法により作製した膜内に解像度10ミクロンのポリイミドの微細パターンの形成を確認した。

(大塚正久/芝浦工業大学)


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 2C3:樹脂接続 1  ACF
   ACFに関して4件の発表があった。
   パナソニックモバイルコミュニケーションズ(鈴木ほか)は、屈曲性に優れるアクリル系樹脂をベースとしたACFの報告と、ラミネーション法銅張積層板及びキャスティング法銅張積層板の2層FPCとの接続性を評価し、PIの表面状態、極性基の存在確率が接続性及びその信頼性に寄与していることを報告した。
   デンソー(野々山ほか)は、電極間に導電粒子がある場合の電界強度解析、電極形状を加味した接続状態での解析を行い、ACFの絶縁寿命の考察を行なった。また、実験によって解析の妥当性を評価している。
   インターナショナルディスプレイテクノロジー(大塚ほか)は、捕捉粒子数を観察してその分布が正規分布となっていることを明らかにし、平均捕捉粒子数と標準偏差との関係を一般化し、必要な捕捉粒子数を確保するための最小面積を推定している。
   大阪大学(宮本ほか)は、接着温度をパラメータとして、その反応率に着目し、機械的接合強度及び信頼性に及ぼす影響を報告した。
   ACFを用いた接続性やその信頼性に関し、考察や解析を進めた発表が多く、一歩踏み込んだ充実した内容であったと感じた。

(森 三樹/東芝)


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 2C4:樹脂接続 2  導電性接着剤・アンダーフィル
   このセッションでは、樹脂接続に関する報告が2件、アンダーフィルに関する報告が1件あった。
   1件目は、CdTe素子を用いたγ線検出モジュール開発の講演であった。CdTe素子の組立て工程は、素子劣化防止のための温度制約と機械的強度の制約から、樹脂接続が適当であることを示した。
   2件目は、Ag-Sn合金-エポキシ系導電性接着剤を用いた高温信頼性に関する講演であった。エポキシ樹脂中に添加する合金粉末の組成、表面めっき処理の有無と高温保持下での電気抵抗増加、接合強度の低下について検討したものであった。樹脂に添加する合金表面にAgをめっきすることが電気抵抗増加防止に有効であることを示した。
   3件目は、携帯機器用アンダーフィル実装試験片の強度評価に関する講演であった。樹脂特性や塗布形状が信頼性に及ぼす影響を実験と有限要素解析結果と併せて検討した。アンダーフィル樹脂弾性率の適正化と線膨張係数をはんだに近づけることが有効であることを示した。
   樹脂材料は実装材料として様々な方面で用いられているが、その種類は多くまた、材料の組み合わせによる相互作用など、未知の部分も多い。今後の研究が進むことを期待したい。

(天明浩之/日立製作所)


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 2D2:光実装 
   本セッションは期せずして技術研究組合 超先端電子技術開発機構(ASET)電子SI技術研究部による講演(計5件)の様相を呈した。
   アクティブインタポーザへの適用を目指した光素子の薄膜化技術についての発表、光接続に革新的な変革をもたらす自己形成光導波路技術の発表と続いた。さらに、アクティブインタポーザ間の光配線接続の課題解決として、インタポーザ内蔵形光コネクション技術の発表、続いて、EMIの観点から光伝送基板と電気伝送基板の比較評価結果に基づき、光伝送基板におけるEMI低減のための基板構成に対する提案がなされた。最後の発表として、光ファイバ配線板の低価格化が期待できるプラスチック光ファイバ配線板技術、特にそのコネクタ取り付け方法について詳細にご検討された結果の報告がなされた。
   革新型から実用化を間近に意識された研究まで多岐にわたる精力的な発表が相次ぎ、それと対応してか会場からは種々質問がなされ、盛況のうちに光実装セッションの幕を閉じた。

(小池真司/日本電信電話)


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 2D3:MEMS 
   本セッションは微細加工技術を中心としたMEMS(Micro Electro Mechanical System)の特集であり本シンポジウムとしてようやく発表され始めた非常に新しいジャンルである。そのためかD室では比較的空席が目立った。内容的にはプローブ先端の放電加工、化学気相成長法による銅配線形成、医療利用のMEMSデバイス(ポンプ)、アルカリエッチングによる光中継端子の形成そして低熱膨張Fe-Ni合金膜の性質の発表であり、バラエティに富んだものであった。
   また、発表者は論文に入る前の導入部に解説時間を多く費やしたり、研究全体の位置づけと今後の方針等を詳細に述べるなど、新しい分野であるだけに発表手法的にも色々工夫していたようである。質問も一般的なものからかなり詳細な事項まで多岐にわたり、参加者も様々であることが伺えた。今後MEMSの研究が活発に行われ、更に本シンポジウムでの発表が増えることを期待したい。

(江森雄二/沖テクノクリエーション)


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開催にあたって 会議の概要 セッション報告 MES2003を終えて